モデリングはどこまで簡単になるのか?VRでモデリングの体験会をやったので感想とか情報とか
VRで3Dモデリングをする体験会をやった。「3DCGのモデリングをしてVR世界を作る会」ではない、「3DプリントやCNCで加工するためのモデリングをVR世界内でする会」だ。 3Dプリンターはいろいろなところで目にするようになった。しかし、そのための元データをモデリングするのはまだまだ敷居が高いようで、やってる人は少ないように思う。無料で使える使いやすいソフトも多くあるが、しかしそれでも3次元的なものを2次元、それもPCなどの限られた画面で作るのにはやはりやりにくさがあり、慣れとスキルが要求される。
そこで気になるのがVRだ。3次元空間の中でモデリングができれば、粘土をこねるような感覚、積み木を重ねていくような感覚で、よりフィジカルな感覚に近く直感的にモデリングができるのではないか。初心者が習得するのが簡単なのはもちろん、プロだってより速くより作りたい形を正確に作れるようになるかもしれない。そういった希望をもってVRモデリングソフトを見ている。まだまだ発展途上ではあるけれども、ソフトの本数も増えてきたので、ここらで一発やってみるかということで体験会を催した 。会では3本、その他含めて5本を体験したので、各々の感想などをまとめた。
VRモデリングソフトについて
比較表(2017年9月時点)
あくまで私が調べた範囲です。VIVE持ちなのでVIVEに偏っているかもしれません。他のソフトや間違いなどがあればコメント等もらえたら追加。修正していきます。
タイトル | 価格 | プラットフォーム | エクスポート | 特徴 |
---|---|---|---|---|
MakeVR | ¥3,980 | VIVE | stl,obj | ブーリアン演算で形を作っていく エッジを取り出せるツールはVRモデリングソフトでは独特 |
MakeVR Pro | ¥4547 | VIVE | MakeVRの上位版 グリッドを使用して正確なモデル製作が可能に ミラー/ラインに沿ったスウィープ/回転/ルーラー/ジグツールが追加 |
|
Mindesk VR | 不明 30日無料 |
Oculus /VIVE |
Rhino | Rhinoのプラグイン |
Verto Studio VR | ¥ 2,980 | VIVE | obj /vsxproj | VR空間のモデリング用ソフト? |
VRCAT | 無料 | VIVE | obj | 3Dドローイングが主だが、立体物も扱える |
3dSunshine | 無料 | VIVE | Minecraft?? | マインクラフトにアップロードできる3Dデータができる |
Makebox | 990円 | Oculus | obj | ブロックを積み上げるように3Dモデルを作成 |
Artstage | 1980円 | VIVE | obj,png | 3Dドローイング、ペインティング、スカルプ CADというより3DCGのパック |
UnrealEngine VREditor |
無料 | Oculus /VIVE |
UnrealEngine | VR内で使えるアンリアルエンジンのエディタ |
Blocks | 無料 | Oculus /VIVE |
obj,gif | エントリー向けのローポリモデリング Googleが開発、UIが秀逸 |
Medium | 2990円 | Oculus | obj,fbx | 完成度の高いスカルプティングソフト コントローラーはOculus touch |
Mesh Maker VR | 無料 | VIVE | obj | メッシュモデリング |
各ソフト所感
Google Blocks
Google blocks VR 3D modeling
まず体験してみたいなら私はこれをおすすめする。Googleが無料で出しているローポリゴンモデリングソフト。ポリゴンのメッシュを操作することでモデリングしていく。エントリーユーザー向けだが、UIと機能の取捨選択が秀逸。色を選ぶところ(動画)など一回体験したら忘れないし、すごく楽だ。空間UIというものを分かっていらっしゃる!という感じ。グリッドモードがあるので、VRモデリングによくある「ぴったりの位置に定まらない」ということもない。
HP:Blocks - Create 3D models in VR - Google VR
MakeVR
makeVR VR 3D modeling
実用向けに作られており、最近上位版MakeVRProも発売された。3Dプリントできるデータが作れるというのが売り。基本的な図形を足したり引いたりしながら形を作っていくタイプのソフトで3DCADを使っている人にはなじみのある方式だと思う。逆に引き算で形を見ることに慣れてないと思った形を作るのはちょっと難しいかなと感じる。ただ足し算で形を作るのは簡単。コントローラーの先にタクトがついているのだが、そのおかげでオブジェクトやメニューの操作がかなりやりやすい。また、ツールの選び方など少しPCライクな感じで、PCに慣れた人にとっつきやすい(個人的にはめんどくささを感じるが)。3DCADをやっている人が使うならMakeVRシリーズがよさそう。まだ実用的な部品を作るには厳しいが、Pro版もでて、より実用に近いソフトになっていくのではないだろうか。出力するときには結構粗めのメッシュになるので注意。
HP:MakeVR
Oculus Medium
個人的に、今時点で一番実用できるソフトだと思う。VRとスカルプティングの相性はとてもいい。今回本来Oculus touchで操作するところをHTC VIVEのコントローラーを使っており、完全な操作はできなかったが、それでもこのソフトは十分使えるソフトであることはわかった。ツールも多彩で完成度が高い。ぜひVIVEにも正式対応してほしい。ただ、ゲームや映画と違い3DCGより3DCADとしての機能が求められるfabの場面ではスカルプを使うことはそんなに多くなく、ツールというよりむしろ使い方を考える必要がありそう。 HP:Medium
MeshMaker
点をつないでメッシュを作り、メッシュを操作して形を作るモデリングソフト。私はぺーパークラフト用のローポリゴンのモデルを作るのだが、この方式はメッシュをお絵かきするような感覚で自分で指定できるのでとてもやりやすい。ツールメニューの使い方は独特(空間に目シューが固定で浮かび、空間にあるボタンを押し込む)でおもしろい。また、空間スナップの単位が選べるなど光る機能もある。ただし、決定的に使いにくいし、安定しない。途中で動かせなくなったりすることが何回もあった。現在まで開発中の早期アクセスなので当然と言えば当然。開発が進んで安定化することを期待している。みんなが使いたいわけではないだろうが、一部の人間はとても便利に使えるソフトになりそう。
VRCAT
基本的には3Dドローイング&ビュワーだが、立体も扱えるのでモデリングにも一応使える。ただ、基本的な立体を大きさを変えて足すことしかできないので、高度なモデリングはできない。無料なのでとりあえずの体験にはよかったかもしれないが、Blocksが無料で出た今はこのソフトを3Dモデリングソフトとして使うメリットはあまりないように思う。
VRモデリング体験者の感想
今回体験したのは3DCADはいじっている人。「正直もっとおもちゃみたいなもんだと思ってたけど、これは可能性を感じる」とか「PCではマウスで移動させて角度を変えてその後でツールを使わないといけないが、VR空間では頭でのぞきこんで、それと同時にツールが使える、それだけでもすごい手数が減って便利」という感想があった。評判が良かったのはMakeVRで、コントローラーの先に出るタクトがすごく使いやすいとのこと。また、VRモデリングはとても子供に向いていると感じるのだけど、ヘッドセット自体13歳以下を推奨しているのでそこが気になるという意見もあった。
全体的にはすごく可能性を感じてもらえたように思う。完全に感覚的、直感的とはいえないまでも、一回した動作を覚えやすく学習コストがとても低い。本を見なくてもモデリングができるようになる。
次はモデリングをほとんどしたことがない人に感想を聞いてみたい。
体験会についての感想
体験会をやることで、漠然とソフトを触ってみるだけでなく調べたり比べたりできたので良かったかなと思う。来てほしかった3Dプリントはするけどモデリングをあまりしない人たちに参加してもらえなかったのは残念だった。場所と日程の問題もあっただd老が、正直あまり興味を持ってもらいにくかったのかな。これをメインにやるというよりは何かしらのイベントのどこかで体験できるとか、ラボに行ったついでに体験やってたぐらいの入り口にしたほうがいいのかもしれない。
体験会を行う際についての覚書
動画キャプチャ
せっかくやるのなら動画を撮っておきたい。今回はVRCaptureというフリーのソフトを使ってみた。ただ、ソフトを立ち上げてからVRアプリを立ち上げて…という手順が面倒だったのと、(定かではないが)モデリングソフトのエラーが起きやすくなる感じがする。次は他のキャプチャソフトを試すか、Windows標準のXboxのゲームキャプチャで撮ろうと思う。
音声
外で見ている人も聞こえるようにPC側にミラーリングしておいたほうがいい。SteamVRの設定でできる。モデリングだけなら、むしろ外だけにしてイヤホンを外しておいてもらったほうが外からの声も聞こえていいかもしれない。
酔い対策
モデリングは酔いにくいと思うが、それでも酔う人はいる。事前にヒヤリングして、酔いやすそうな人には酔い止めを飲んでおいてもらえばベター。そこまでしなくても、事前に人の操作している画面を見ていると酔いやすいことのアナウンス、随時大丈夫かの声かけはしたほうが良い(反省)。酔っちゃったとき用にアイスとか用意しとくと親切だな。
体験の仕方
単にツールを使ってもらうだけより簡単になにかをモデリングしてもらったほうが外の人も中の人もおもしろい(し、あとで3Dプリントとかもできる)。モデルのサイズが大きすぎたり小さすぎたりすることが多いので、3Dプリントする際にはサイズを変更すること。参加したひとがモデリングしたはにわ。