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ヤクの毛刈り祭り --yak shaving festival--

日記

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珍しいことに荷物が届いた。箱いっぱいに握りこぶし2つ分くらいの大きさの岩の塊のようなものが入っていて、海の匂いがする。どうやら貝の一種のようで、金槌とナイフでこじ開け口に入れると海水が溢れる。ねっとりしたところもあり、栄養価が高そうだ。

北に調査に行った56が送ってくれた。添えられたメモによれば、浜に10mはあるロボットが打ち上がり、その身体にはこの貝がびっしりとついていたとのこと。ロボットは岩のようになっていたものの関節は比較的きれいで、最近まで海底を動いていたと考えられる、と書いてあった。

炒めて食べたがなんとも言えずうまかった。食べ切れなかった分はオイル漬けにした。

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球体ギアを印刷したのだが出力に失敗し、引き伸ばされながら歪んだ奇妙なギアができた。がっちりとプラットフォームにくっついたそれを剥がすのは大変だった。汚染されぬよう前布、手袋、眼鏡姿で、スクレイパーを槌で叩きながら樹脂を割り剥がしていく。化石の発掘作業のようだ。古代の考古学者になったような気持ちで、化石か遺物でも出てこればいいのになと思いながらただの樹脂の塊を割っていく。塊は取り除けたもののどうもプリンタの動きがおかしく、修理が必要そうだ。

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U3の工房の手伝いが減ることになった。その分飯が減るわけで、そのうちに困ることになるだろう。住んでいるオンボロは元は宇宙船で、食料生産ユニットがあるはずだ。修理したら使えるかもしれない。狩りを増やしてもいい。野良ロボットを捕まえて食料生産を任せられれば理想的だがそんなにうまくはいかないだろう。まずは食料生産ユニットと狩場の調査をしよう。

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ピーピーピーピーピーと警告音が鳴り機械が停止する。また故障だ。1Mと一緒に修理をする。
作業中の世間話で、最近抽選に当たり、南西の島の調査業務に行くと言っていた。調査とはいってもあの島はほぼなんの危険もない。熱帯の植物が茂り古代の遺跡が残る静かな土地だ。調査員同士の情報交換が主だった業務だろう。飯が出るバカンスみたいなもんだ、羨ましい。どこに当たるかはわからないが、来年の調査業務抽選には自分も応募しようと誓った。

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船内を片付けて、食料生産ユニットの状態を調べた。使われていた形跡があるのは二つ。一方は掃除をしてやればすぐにでも使えそうだが、年式が非常に古く、生産能力に不安がある。また、自動化部品が失われているため追加してやる必要があるだろう。もう一方は損壊が激しく、ゼロから作るといってもよい状態だ。こちらは大仕事になる。その二つに加え、三個のポータブルマシンを発見した。やることリストの上位に付け加える。

1.ポータブルマシンの設置、使用開始
2.1号機の掃除、媒体の化学調整、自動化装置の追加、使用開始
3.2号機の設計、修理

2号機が稼働しだしたらポータブルマシンを拡張して第三ユニットをして使ってもいいかもしれない。

夜には狩場について少し調べてみた。候補はいくつかあったが、得られるものが同じなら近い方が危険がない。明日一番近い場所の様子を見に行ってみよう。

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狩場候補の調査に行った。マップを頼りに歩いていくと、目星をつけておいた道が通れなくなっていた。仕方なく山側に登り回り込もうとするが、降りられる場所がなかなかない。結局予定の地点よりだいぶ遠い点を見て回ることになった。岩礁沿いに予定の地点に行くこともできるが波もあり危険だ。狩場としてもそこまで豊かには見えず、残念だが毎日の狩場としては不適合だった。

途中迷い込んだ農地に人がおり、道を尋ねると風車への道を案内された。その先では巨大な風車が2機、恐ろしいスピードで羽を回転させている。圧倒される。しかし、この風力発電風車で生み出される電気は、いまやどこへも供給されていない。かつてこの地域の住民を満たしたであろう風車は、今はただ回るだけだ。

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船内の整備をしていた。生産ユニットの整備をしなければならないのだが、ついつい居住ユニットの整備を始めてしまった。調子の悪かった音響機械の代わりがないかと103と一緒に遠くのジャンク場を数カ所巡り、良いものを見つけた。そいつも取り付け、快適になった居住ユニットでsushiとdashを食う。嵐が来るらしい。

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ここ数日はU3の工房へ行っていた。機械パーツの出力を手伝ったりレーザー加工機の調整をしたり。今日は比較的時間があったので、頼まれていた靴につけるアタッチメントの制作を進めた。小型のバッテリーパックを外付けし、冷却機やらのパーツを取り付ける計画だ。とりあえずベースとなる靴のスキャンをし、細かいパーツを出力した。ポイントとなる靴底のモデリングもしなければ。ぼちぼち進めていく。

台風は大したことなく通り過ぎたが、また次の台風が来るらしい。

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天気が悪い。遠征に行く予定だったが風と雨が強く危険なため中止した。かわりに道具の確認を兼ねて船内でキャンプをした。ナイフを研ぎ、肉を焼き、酒を飲んだ。

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休日。音楽祭を見た。船内の片づけをしていたところ(適当に足を置いても物を踏まなくなってきて快適である)、だいぶん古いVR記録チップを見つけたのだ。表面は劣化し何も読めないし、端子も死んでいそうだ。しかし、旧式の再生機に読み込ませると(2回の変換をはさむ)意外なことにほぼノイズなく再生できた。
ヘッドマウントディスプレイを被ると、迫り来るような音楽と、溢れかえる人々が現れる美味しそうな食べ物の香りに海の香りが混じる。海辺で行われたなにかの行事らしく、壇上で楽器を持った人間が演奏し、歌い、それらを崇めるように手を挙げる人や、飯を食べながら話す人、人、人。現代ではこんなに一箇所に人が集まることなどないので圧倒される。古代の人々の記録に紛れてはるか昔の音楽に耳を傾ける。男女が「サニーデーサービスのあの曲好きなやつだった」「カワモトマコトどうする?一度帰るか」というのが聞こえた。それがさっき歌っていた歌手の名前なのだろう。ネットのジャンクデータ置き場にそいつらのデータがないか探してみようと思う。

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