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ヤクの毛刈り祭り --yak shaving festival--

3ヶ月かけて靴下一組を手に入れること

かたっぽだけが行方不明になる、それが靴下。私の靴下もいつのまにか次々に旅立ってゆき、両足を揃えるのに苦労するようになってきた。

 

蒸発だけじゃなく、踵やつま先が薄くなったり穴が空いたり、買い替えの機会が多いとおもう。靴下は衣料品の中で下着と並び消耗品に近い。

 

「自分の使うものを自分で作る」をテーマに作ることを考えるときには、体に近いもの、そしてアップデートをかけやすい何度も必要になるものがより優先度がたかいというかマッチする。だから、靴下が少なくなってきた時、新しい靴下は買うのではなく作ろうと思った。

 

 

くるくる編み機で作る

靴下というのは布を縫って作るのではなく、編んで作られている。しかし手編みはハードルが高いな、と思って思い出したのが子供のころ好きだったおもちゃの編み機だ。ハンドルを回すと牙のようなかぎ針がにょきにょきと突き出で次々に目を作っていく。マフラーを作ったり編みぐるみ的なものを作ったりして遊んでいた。こういうやつだ。

メリヤス編みという編み方しかできないのだが、靴下はほとんどの部分がメリヤス編みでできている。ええやん、ということでこれを使って靴下を作ってみた。靴下のレシピはなかったがルームシューズのレシピがあり、足首から下と上をそれぞれ別についてあんで接ぎ合わせた。

 

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 素晴らしいのは30分ほどでできてしまうところだ。技術もいらない。そしてハンドルを回すだけでどんどん出来上がっていくのは楽しい。圧倒的に楽しいのだ。はぎ合わせのやり方が下手でその部分の伸びが悪く若干吐きにくいが、けっこういいできだ。が、大きな問題がある。

 

靴下用の毛糸

付属の毛糸で作ったらもこもこになった。風合いはいいのだが、私の求めている靴下は寒い日におばあちゃんが靴下に重ねて履いているやつではなく、その一枚内側の靴下だ。というわけで糸を変えたい。調べると靴下用の糸があった。ソックヤーンと調べるといろいろでてくる。ウールにアクリルを混ぜることでこすれに強く、履き心地よく、洗濯にも強い毛糸とのこと。編むだけでカラフルになるタイプの糸がたくさんあって楽しい。

買ったやつと同じのは見つからなかったけどこういうの。このソックヤーンで編んでみたが、このおもちゃで編むには毛糸が細すぎてスカスカになってしまう。それと、やはりはぎ合わせが面倒だ。もうちょっとちゃんと靴下をつくりたいな、ということで別の方法を試してみた。

 

ニットルームで作る

ニットルームというものがある。原理は上のくるくる編み機と同じで、ひとつひとつの動きを機械じゃなく手でやる。編み物したことがなくても簡単にマフラーが編める、とかで100均とかで売ってたりする。これのソックス用、というかソックスの編み方レシピ付きのものがある。これで学べばより進化したくるくる編みができるかなと思って試してみた。空き時間を使って2日くらいで完成。

 

 

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上が一本取りで下が二本取り(毛糸日2本を一本として編む)。二本どりのほうがしっかりしていて物はいい。一本取りだと履くと少し隙間ができる。履きやすい。実用に足るものができた。ただ、やっぱり普通の靴下に重ねてはくオーバーソックスとしての使い方の方がしっくりくる感じ。 

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 かかとがしっかりできるので「靴下ができたぞ!」という感じでテンションが上がる。かかる時間も長すぎないし、体験として非常にバランスがいい。

 

手編みをする

  しかしもうちょっと薄手の、目の詰まった靴下が欲しい!ということで覚悟を決めて手編みに挑戦することにした。ちなみにまともな編み物はしたことがない。

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amirisuというところの初めての靴下というキットを購入。このキットは「はじめての靴下」で「はじめての編み物」ではないので、キットの説明だけではわからず、ネットで動画を見たりして基本の編み方を学びつつ進めた。

 

1週間くらいやればできあがるかな、と見積もっていた。編みはじめて、甘く見ていたのだな、と気がついた。はじめの1cm分編むのに2時間くらいかかった。

 

それからは作業に飽きたときや移動時間、果ては風呂に入りながら、と隙間時間を見つけては編んだ。

 

編むのは楽しい、というか心が落ち着いた。あまり頭を使わないので他のことが億劫な時でもできて、手を動かせば確実に進んでいく。暇なときには編めばいい、なにかに迷う必要はない。今の自分にはとてもちょうどよかった。

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旅先で編んだので、靴下を履く時に海を思い出せる。

 

途中で針が折れるなどのトラブルで中断したりもし、結局4/1に編み終わった。大体3ヶ月かかった。コンビニに買いに行けば5分、300円で手に入る靴下というものに3ヶ月、5000円くらいかけた。時給も含めたらかなりの高級靴下だ。

一方で映画何10本かとか、まんが100冊分とかの時間は楽しめたので趣味にしては安いな、とも思う。

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 間違えたところもあるが、立派な靴下だ。ほしいものがやっと手に入った。

 

 編み物自体への感想だが、正確にやらないといけなくて、目を間違えたらほどいてやり直しのイメージがあったが、案外適当でもなんとかなるというか、フォローがきくのが発見だった。ひとつひとつ塗りつぶしていく塗り絵のようなイメージだったが、もっと自由で粘土みたいなイメージ。

 

一本の糸から立体ができるところ、設計図はデジタル的なところ、道具が最小限なところ、ほどいたら戻るところ、編み物めちゃめちゃかっこいいなと思った。

 

しかしまぁ3か月は、長い。慣れた人なら1日で編めるとかいう話もネットにあったがまじかよってかんじだ。というわけでファブっぽいものを取り入れつつくるくる編みでもうちょっとまともな靴下を編む方向でもうちょっと試したいなというのが現状の感想。こういうの作ってみようかな。

www.thingiverse.com

おまけ

 

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こういういのも設計して作ってみたがぽきっと折れて使えなかった。積層方向がね…。