自家生産フィラメントを販売しているNature3Dさんが出している耐熱のPLAフィラメントを試した。まずやっていることが面白いし、ためになる知識をブログ等でばんばん書かれているし、Twitterでフィラメントづくりの成功や失敗(!)をがんがん公開しているし、個性的かつ信頼が置けそうだなーと思ってフォローしていたんだけれども、実は使ってみたいフィラメントがなかったので一回も買ったことはなかったのですよね。
ところが最近耐熱のフィラメントが使いたいなーと思っていたところにちょうど耐熱PLAの無料サンプル(レビューが必要)があるという情報が流れてきたので申し込んでみた。
当初はフィラメントゴミを成形するための型・あと錫の鋳造するのに使う予定だったのだけど、その件は別の方法で片付いてしまったので「何に使おうかなー」と悩んでいたところに、ちょうどいいものがあった。シェアメイトがモデリングして作ってくれたこれ。
このぐにゃぐにゃはなにかというと
箸とかフォークとかを入れるカトラリー用のかごだった。
もちろん始めはちゃんしゃっきりした形をしていたのだが
食洗器のお湯と熱風にやられすっかりぐにゃぐにゃになってしまった。食洗器、思ったよりだいぶアツい。
うちにあるフィラメントをいくつか試してみた。これは素性は忘れたが一般的なPLAフィラメントで作った一号。大きく歪み、手で折れるほどパキパキになった。
こちらは2号。PLAよりは耐えてくれるかと思ったのだがあえなくぐにゃぐにゃになったPETG。
普通のPLAもPETGもだめ!!!ABSはないしPLAと同じプリンタであんまり使いたくない!
耐熱PLAフィラメント使ってみた
で、冒頭の耐熱PLAフィラメントである。一般的なPLAは50℃くらいの熱で歪んでしまう。耐熱とはいえPLAだしなぁとあまり期待せずに造形開始。設計はノズルを一般的なPLAより少し高めに設定したくらいでこの説明に従う。特別なことは必要なかった。プリンタはPrusaMK3S。積層ピッチ()。ベッドサイズぎりぎりでスカートが入らなかったので省略したのだが、食いつきがよく一層目からほぼ完ぺきにベッドにくっついてくれた。
何の問題もなく造形は終了したのだが…台から剥がす時に力を入れて押してしまったら破損してしまった。「削れる」というだけあって、普通のPLAのような弾力性はあまりないのか細い部分はパキパキと折れてしまう。
そしてここ。耐熱にするにはアニール処理と呼ばれる熱処理が必要になる。本来はオーブンでやるのだが、オーブンがないのでリフロー用に使っているホットプレートで行うことにした。本来は庫内に温度ムラがない方がよいらしく、ホットプレートは推奨されない。が、ないものはしょうがない。処理の温度は80℃~100℃。温度を見ながら30分ほど熱を加えた。
冷ました後に取り出したもの。見た目や感触は変わらないように思えた。若干歪んでいるが、ホットプレートの鉄板との距離がなさ過ぎたのでむしろよくこのくらいのゆがみですんだな、という感じ。
で、実際使ってみる。食洗器の標準モード、乾燥一時間の後に取り出してみると…。
全然歪んでいない。隣の2号(PETG)と比べるとその差がわかる。というわけで成功したのでモデルをもうちょい頑丈に修正してさらなるバージョンを作成。
これで使える!
ちなみに注意ですが、このフィラメントは食品に使えるグレードとして作っているわけではない&3Dプリント品は積層の溝に雑菌が繁殖しやすい等、あんまり推奨される使い方ではないと思います。やるとしたらそのへん念頭に置いたうえで自己責任で。
感想
耐熱PLA思ったより普通のPLAとの違いがすごかったし、熱処理や造形も手軽に行えた。あと、今回の用途には合わなかったがこの削れる感はすごい。私は設計が適当なのでよくあとから削ることになるのだが、普通のPLAだと削りにくいので「これはけずることになりそうだな~」という時には木質フィラメントを使う。だがまぁ私の使っている木質フィラメントだとベッドからはがれやすかったり、そもそも木質である必要がないのに木の質感だしてもなという問題があった。ので、きっちり設計しきるより、ザクっと作って出力されたものを現物であわせていくという3Dとクラフトあわせたっぽい手法が好みの人間には結構ありがたいフィラメントなんじゃないかなーと思ったりした。
気になった人はここから無料サンプルももらえる(ある時には)ので申し込んでみては。