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セリグマンの犬の脱出―escape of Seligman's DOG―

はじまりのうた感想

クソったれな気持ちで目が醒める朝、というのがある。今日はそんな感じだった。雨で肌寒い。二日酔い気味の頭と、酒とタバコの臭いが残ったままの臭い体。 水を飲んで一息いれるとフラッシュバックしてくる記憶。昨日の自分におまえ何様だ、と言いたくなる。寝ている夫を見れば、昨日の自分の無様な行動を思い出す。 最悪とは言わないまでも、最低の気分だ。

で、ふと、こう思った。

そういえば随分と、レンタルビデオ店でヒューマンの棚に置かれるような作品を見ていない。昔は好きだったのに。感動大作じゃなくて、単館上映してそうなやつ。

朝の7時。普段の休日なら二度寝をする時間だが、寝れそうな気配がない。夫は寝ている。布団から抜け出す。

AmazonビデオとNetflixで探すが、なかなかピンとくるものがない。しかたなく、ギターを弾いている画と、公園のベンチに冴えないおっさんが座る画が交互に現れる映画を選ぶ。説明は「会社をクビになった音楽プロデューサー。小さなステージで歌うシンガー。お互いに出会い、それぞれの人生に変化が現れる」。微妙だな、と思いながら、しかし他に良いものもないし、評価の星は4つ半。悪くはないだろう、と再生ボタンを押す。


『ONCE ダブリンの街角で』監督が手掛けたドラマ!映画『はじまりのうた』予告編 ※この予告編ちょっと女性の恋愛重視でちょっと人を選ぶと思うんだけど、半分おっさんが主役だし、恋愛映画としてでなく見れると思う。

で、感想としては、良かった。わりとベタにキメてくるので人に好きだと言うのは恥ずかしいけれど、安定感があった。こんなこと起きないだろうな、とは思うものの、そんなのは映画だからいいのだ。フィクションの希望が気分を明るくしてくれるときだってある。まぁ全体のシナリオはね、恋愛に傷ついた女性が落ちぶれているけど実はすごい人に見出されてなんかちょっといい感じになったりしながら元気になる、という風にまとめてしまうと、またか、という感じはするんだけど、それがギリギリいやらしくないところでストップされているし、ともかく、各々のシーンとか、キャラクターとか、音楽とかが良い。これはもう言うまでもないので、見てほしい。特にハーレムでの録音シーンと、エンパイアステートビルの近くの屋上でやるシーン。きっと「警察呼ぶぞ!」って怒鳴り声までアルバムに入ってるんじゃないか。ああいうこと、やってみたいものだ。

見た人と喋って「だよねー」って言いたいので、みんな「君の名は」ばっかり見に行ってないで、家で「はじまりのうた」も見よう。Netflixいいですよ。 以下、良かったところをあげるが、ネタバレをあるので見ようと思っている人は読まないほうが良い。



まず、主人公の二人が、セックスをしないところがいい。あれセックスしちゃうと台無しだったと思うので、しないで良かった。ふたりで音楽聴きながら街を歩きまくるシーン、理解し合っている喜びが溢れている、人生における100パーセントの瞬間だったし、もう完全に惹かれて、お互いそれを理解しているんだけど、くっつかないっていうの、いい。好きだ。

あと元彼とよりを戻さないところも良かった。彼女の曲を彼女のアレンジで歌うと約束した彼はその約束を破りライブの途中で彼のアレンジにしてしまう。彼は悪気があったわけではなく、彼が見つけて惹かれたもの、ライブでファンと盛り上がると行ったようなこと、を彼女と共有したかったんだろうと思う。ただその行為自体が、彼が変わってしまったこと、つまり彼女とは乖離してしまったことを決定的にしていて、おお、より戻るのか!?と思って引きかけた体を一気に戻された。良い悪いではなく、変わってしまって、戻れないことの決定的さみたいなもの。

サブのキャラクターたちが魅力的。おっさんの妻の感じがもろ好みで、人生と戦っている女性、という感じで良かった。あと、女性主人公の男友達!絶対これ昔主人公好きだったよなーとか思うんですが、もういいやつすぎて彼には幸せになってほしいですね。バンドメンバーもちぐはぐな感じで良かった。ラッパーのバックバンドっぽいドラムとギターに、コミュニケーション障害ありそうな音大のエリートバイオリン君とその姉のチェロ。バレエ教室でバイトしていたピアノ。バレエ教室でピアノを弾いてて声かけられて3秒くらいでバレエ教室を辞めるところ良かった。辞めるけどお前たち頑張れなーって言われたちっちゃいバレリーナたちが、はーいって返事してるところとか。

あと最後、曲をダウンロードできるようにしちゃうところと、結局またクビになって終わるところはクールでしたね。